*ゲストディスカッサント

菅野由弘 村尾忠廣

菅野由弘
〜音楽家の立場から「音楽の愉しみ」を語る〜

音楽の「愉しみ」という表現は,様々な事柄を言い得た言葉です.良く言われる,「音楽」は「音」を「楽しむ」から音楽だ,というのは素敵な間違いで ,器楽が「楽」で,歌が「曲」,つまり楽器で演奏するものが音楽で,歌が音曲なわけです.同様に,ポップスとクラシックという分類は,音楽のジャンル分け ,スタイルの違いを表しているのですが,この分類によって誤解が生まれています.本来は「シリアス・ミュージック」と「コマーシャル・ ミュージック」に分類し,そのスタイル,もしくはジャンルは何に属する, と認識されるべきものです.「音」が出れば何でも「音楽」である,という のも一面の事実ですが,文化や人間を背負っていないものは,音楽ではありません.特に研究者の皆様には,この「文化」の部分を大切にして欲しい,単なる材料として扱うことは ,音楽への冒涜であることを再認識して頂きたいと思っています.
 

写真(c)木之下晃 

菅野由弘(かんの・よしひろ) プロフィール

作曲家

東京芸術大学大学院作曲科修了.79年「弦楽四重奏曲」がモナコ・プランス・ピエー ル作曲賞.94年,電子音楽「時の鏡I ―風の地平」がユネスコ主催 ,IMC推薦作品,2002年ラジオドラマ「アウラ」でイタリア放送協会賞受賞.オーケストラ,室内楽などの洋楽器,雅楽や聲明などの日本の伝統的な楽器 ,コンピュータによる電子音楽素材の3つの柱を駆使して作曲活動を行っている.

主要作品は,国立劇場委嘱の雅楽,聲明,古代楽器のための「西行―光の道」(春秋社刊),聲明とパルサー波によるコンピュータ音楽「虚空星響」(DENON),NHK交響楽団委嘱のオーケストラのための「崩壊の神話」 ,NHK委嘱の,オーケストラと雅楽,能管,太棹のための「蜘蛛」な ど.他にNHK大河ドラマ「炎立つ」 ,NHKスペシャル「フィレンツェ・ルネサンス」の音楽や ,サッポロビール北海道工場の環境音楽,サッポロ・ファクトリーの環境音楽 なども作曲.CDは菅野由弘作品集 Resounding Sphere I「星の死」(FOCD3128), II「砂の都市」(FOCD3184),III「崩壊の神話」(FOCD3449).

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