CrestMuse Symposium 2008
招待講演 石井 信


機械学習による時系列信号の再構成


音声などの時系列処理において、隠れマルコフモデルやガウス混合分布推定など の機械学習手法がしばしば用いられている。本講演では、カオス時系列、音声、 楽器音などの時系列信号を取り扱う機械学習法について、我々がこれまで行って きた研究を紹介する。
最初に複雑な時系列についてそのベクトル場を教師あり学習(最尤推定)の枠組 みで学習し、時系列の再構成および予測を行う手法について紹介する。次に、信 号源が明滅しながら混合する非定常環境において、信号の分離および明滅パター ンの再構成を行う教師なし学習法(ベイズ推定)について紹介する。最後に、音 源同定を目的として、調音特性と基本周波数とを同時推定しながら再構成を行う 教師なし学習法(最尤推定)について紹介する。

略歴
1962年生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。工学博士。1988 年株式会社リコー中央研究所研究員、1994年ATR人間情報通信研究所研究員、 1997年奈良先端科学技術大学院大学助教授、2001年同大学情報科学研究科教授と なる。また、2007年7月より現職となり、奈良先端科学技術大学院大学教授を兼 任している。現在は、ヒトの知性の座である脳の情報処理のモデリングを専門と し、情報理論や機械学習などの数理的アプローチと、行動実験や脳活動計測など の実験的アプローチとを組み合わせることで、システムとしての生命が情報を 「論理的に」処理する過程を解明しようとしている。「論理生命学」という研究 室の名称はこのことに由来している。